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当事務所では、司法書士業務のあらゆる分野について、私たちの知識と経験を活かし、皆様のご要望や疑問にお答えします。
相続登記、遺言書作成、民事信託、会社設立、法人登記を始め、幅広い分野に対応していますので、お気軽にご相談ください。
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MAIL : support@j-shimada.com
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合資会社は、持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)の中でも、有限責任社員と無限責任社員という二種類の社員によって構成される特異な法人形態です。
では、合資会社において、唯一の無限責任社員が死亡した場合はどうなるでしょうか?
実は、ケースによっては50万円近く費用が掛かる可能性もあります。
今回は、そのような合資会社について、問題点と対応策についてご説明します。
島田司法書士事務所は1983年の創業以来、岐阜市を中心に地域のみならず全国からご依頼を賜り、皆様の課題解決に尽力してまいりました。
\ 司法書士に商業登記の全てをおまかせ/
私が記事を書いています。
島田宏基
・司法書士(簡裁訴訟代理認定)
・一般社団法人民事信託推進センター会員
・行政書士
同志社大学法学部在学中に司法書士試験合格、卒業同日に登録いたしました。企業法務や裁判業務を中心に担当しています。法改正により新たな制度が生まれる中、当事務所では積極的にこれらを活用し、依頼者様の課題解決に取り組んでいます。
詳しいプロフィールはこちら。
合資会社において、唯一の無限責任社員が死亡したことにより退社し、存続する社員が有限責任社員のみとなった場合については、会社法上規定があり自動的に合同会社となる定款変更をしたものとみなされます(会社法第639条第2項)。
(合資会社の社員の退社による定款のみなし変更)
第六百三十九条 合資会社の有限責任社員が退社したことにより当該合資会社の社員が無限責任社員のみとなった場合には、当該合資会社は、合名会社となる定款の変更をしたものとみなす。
2 合資会社の無限責任社員が退社したことにより当該合資会社の社員が有限責任社員のみとなった場合には、当該合資会社は、合同会社となる定款の変更をしたものとみなす。
上記の規定により、合同会社への定款変更がみなされてしまった場合はどうすればいいでしょうか?
すぐに総社員の同意により代わりとなる無限責任社員を加入させればいいのでは?と思われるかもしれません。
しかし、合同会社となる定款変更は
『合資会社の社員が有限責任社員のみとなった瞬間=唯一の無限責任社員が死亡した瞬間』
です。
そのため、死亡した瞬間に合同会社への定款変更擬制がされてしまった以上、後から補欠社員を加入させても合資会社を存続することができません。
また、商業登記は、原則として中間省略登記は認めないという厳格な運用がなされているため、たとえ短時間の出来事にせよ法的な変遷を忠実に登記することが求められます。
よって、合同会社への定款変更がみなしがなされてしまった会社が合資会社を存続させたいと考える場合は、次の手続きを行う必要があります。
会社法上、種類変更にかかる定款変更が擬制されますが、商号変更等までもが自動的に変更(例:合資会社甲野商事→合同会社甲野商事)されるものではないとされています(相澤、葉玉、郡谷『論点解説 新・会社法 千問の道標』商事法務609頁)。
よって、合同会社用の定款変更を行う必要があります。
登録免許税:資本金の額の1000分の1.5(900万円を超える部分については1000分の7。最低登録免許税額3万円)
解散登記の前提として無限責任社員死亡による退社登記が必要となり、別途登録免許税が必要となります(昭和42年7月22日民事甲2121号通達)。
登録免許税:1万円
登録免許税:3万円
合資会社用の定款を再度作成し、総社員の同意を得ます。
登録免許税:6万円
登録免許税3万円
ただ単に合資会社を存続させたいだけではありますが、上記のような複雑な手続きを要するうえに、登録免許税だけで最低16万円もかかります。
これに司法書士報酬を加えると、大体50万円前後の費用が発生するものと思います。
単純な話ですが、無限責任社員が複数いれば問題ありません。
ただし、下記で説明する通り、当該無限責任社員が他の無限責任社員と推定相続人の関係にある場合には注意が必要です。
無限責任社員が、当該持分を特定の相続人に相続させる旨の遺言を残していた場合はどうでしょう。
この相続させる旨の遺言は特定財産承継遺言(民法第1014条第2項)といい、遺産分割方法の指定であると解されています。つまり、相続人は、相続発生時に直ちに遺言の内容に沿った財産を取得するということになります。
この場合は、間髪入れずに無限責任社員の持分が承継されるので、合資会社をそのまま存続させることができます。
ただし、当該相続人が有限責任社員場合はの注意が必要です(後記参照)。
持分会社においては、社員が死亡又は合併により退社(会社法第607条第1項第3号、第4号)した場合に、その相続人又は一般承継人が持分を承継する旨(以下「承継加入規定」といいます。)を定款で定めることができます(会社法第608条第1項)。
上記の規定により持分を承継した相続人は、その持分を承継した時(=相続発生時、合併の効力発生時)に自動的に社員となり(会社法第608条第2項)、その旨の定款変更がされたものとみなされます(同条第3項)。
(相続及び合併の場合の特則)
第六百八条 持分会社は、その社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる。
2 第六百四条第二項の規定にかかわらず、前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の一般承継人(社員以外のものに限る。)は、同項の持分を承継した時に、当該持分を有する社員となる。
3 第一項の定款の定めがある場合には、持分会社は、同項の一般承継人が持分を承継した時に、当該一般承継人に係る定款の変更をしたものとみなす。
4 第一項の一般承継人(相続により持分を承継したものであって、出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないものに限る。)が二人以上ある場合には、各一般承継人は、連帯して当該出資に係る払込み又は給付の履行をする責任を負う。
5 第一項の一般承継人(相続により持分を承継したものに限る。)が二人以上ある場合には、各一般承継人は、承継した持分についての権利を行使する者一人を定めなければ、当該持分についての権利を行使することができない。ただし、持分会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。
この定款の規定を定めていた場合は、相続発生時にその死亡した無限責任社員が間髪入れずに自動的に無限責任社員となるため、実体法上合同会社に種類変更することなく合資会社を存続させることができます。
注意しなければならないのは、責任です。
持分会社成立後に加入した社員は、加入前に生じた持分会社の責任をも負わなければなりません(会社法第605条)。
無限責任社員は、読んで文字の如く無限の責任を負いますので、承継加入規定を設けることは推定相続人との関係でよく検討しなければなりません。
合資会社の社員構成において多いのが、無限責任社員が父、有限責任社員が妻や子、といったパターンです。
このような社員構成の合資会社において、上記承継加入規定があった場合はどうなるでしょうか?
実は、有限責任社員が無限責任社員の持分を譲り受けた場合は、当然に無限責任社員に変更されるものと解されています(松井信憲『商業登記ハンドブック[第4版]』商事法務696頁)。
上記とは反対に責任は変更されないとする学説もありますが、少なくとも当地登記所では責任が変更されるものとして取り扱っています。
そのため、上記のパターンにおいて無限責任社員の相続が発生した場合は、社員全員が無限責任社員となり、合資会社から合名会社に種類変更されたものとみなされてしまいます(会社法第639条第1項)。
この場合は合資会社をそのまま存続させることができません。
上記の社員構成である合資会社においては、一部の相続人にのみ持分を承継させることができれば、問題なく合資会社を存続させることが可能です。
例えば、共同相続人間で遺産分割協議を行い、一部の相続人が持分を承継することにする方法が考えられます。遺産分割協議には遡及効(民法第909条)があるので、相続発生時に効力を遡ることができ、一見うまくいきそうです。
しかし、過去の先例において、遺産分割協議により一部の相続人のみが持分を取得しその相続人のみ社員の加入登記をすることはできず、一旦、共同相続人全員で加入登記をしたうえで持分譲渡の登記をすべきこととされています(昭和34年1月14日民事甲2723号、昭和38年5月14日民事甲第1357号)。
これは、社員の地位は権利義務を包括したものであり、責任(=事実上の債務)を遡及的に消滅させることは相当でないためです。
また、実際問題として、相続発生時から遺産分割協議成立時まで無限責任社員が不在の状況が作出されるので、その間に合資会社として行った責任は、一旦は共同相続人間で持分の遺産共有状態となっている以上その共同相続人全員が負っているのではないか、という点も挙げられそうです。
実は、上記の先例があるにも関わらず、一部の相続人にのみ持分を承継させ、共同相続人の加入登記を経ることなく、その一部の相続人の加入登記をできる可能性のある特殊な方法があります。
定款に承継加入規定として、次のような定めがある場合です。
前法務省民事局商事課補佐官 櫻庭倫『平成26年商業・法人登記実務における諸問題』(法務省民事局編 民事月報平成27年5月号、登記情報645号)によると、上記先例に関わらず、定款において加入する相続人を限定している場合は共同相続人全員の加入登記を経ることなく、共同相続人間で定めた一部の相続人のみの加入登記をすることができるとされています。
上記論文において櫻庭倫氏は、定款に規定を設けるという会社側の一方的な行為により、遺産分割協議の結果に関わらず共同相続人全員の加入登記が必要だという結果は、相続人の合理的意思に反し、そのような取り扱いも合理的でない、としています。
実は、この論文が掲載された『民事月報』というのは登記制度を所管する法務省民事局が発刊している雑誌であり、先例・通達とまではいかないものの事実上の法務省準公式見解といえます。それもあってか、商業登記実務において絶大な権威性のある松井信憲『商業登記ハンドブック[第4版]』商事法務においても、上記の論文が引用されています。
なお、上記櫻庭倫氏は、令和6年現在法務省民事局民事第一課長でいらっしゃいます(法務省幹部一覧はこちら)。
当地登記所に対しこの問題を照会したところ、一部追加の条件はあるものの、上記論文のとおりの取り扱いをしてもよい旨回答を得ています。
ただし、この方法の根拠となる文献は今のところ上記論文一件のみであり、否定説も多数あります(登記研究767号、登記情報668号参照)。個人的には肯定説・否定説いずれにも一理あると考えています。
極めて慎重な判断が必要となりますので、必ず司法書士に相談するようにしてください。
持分会社の登記実務は、理論が明確になっていない部分も多くなかなか難しいです。
また、税務上の問題もあるので、税理士の先生にも相談に入っていただくことをお勧めします。
私は、学生時代をコロナ禍と共に過ごし、通学ができなかった数年間は司法書士事務所で仕事をしながら学問に勤しみました。実務経験をもって司法書士登録できたことが、私のアドバンテージとなりました。
現在は主に、商業・法人登記を初めとした企業法務関係と裁判業務を担当しております。昨今の法改正により、新たな制度が多数可能となっていますが、当事務所ではこれらを積極的に利用して依頼者様の課題解決に尽力します。これからも勉強を続け、あらゆる分野において最先端の知識と実務経験を有することが出来るよう、おごらず謙虚に努めて参ります。